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ピッキオ『森の「いろいろ事情がありまして」』を読んだ

読んだ。

『森の「いろいろ事情がありまして」』は、エコツーリズム事業やクマの保護管理を行っている特定非営利活動法人のピッキオが、主な活動拠点としている「軽井沢野鳥の森」でのさまざまなできごとを取り上げている本。

動植物や昆虫のミクロな活動をさまざま見ていくことで、森のマクロな生態系の奥深さを感じられた。本書は春夏秋冬と大きく4章に分かれていて、どういった点に着目するとその季節の森歩きが楽しくなるのかの参考にもなる。個々の話は短く、写真も豊富なので気軽に読めた。

予期せず面白かったのは、動物の話ではなく終章にある『中西悟堂からピッキオまで』。野鳥の会創設者である中西悟堂と関係の深い、星野リゾート常務取締役の星野裕一、日本野鳥の会前神奈川支部長の村上司郎、日本自然保護協会理事の柴田敏隆の三氏に一問一答をしている (肩書はいずれも当時)。

軽井沢は三大探鳥地のひとつに挙げられるほどの場所だけど、最盛期を知る人たちからしたら野鳥の種類も数も減り、にぎやかだった森は見る影がないとのこと。本書が書かれたのは2007年、ここ20年ほどでガビチョウやソウシチョウといった外来種が急激に繁殖したことを考えると、2023年現在はより状況が悪化していることは想像に難くない。

とはいえ、軽井沢も別荘地化する以前はただの野っ原で、野鳥の森も同様だった。100年かけて多様性ある森を整備していったことを考えれば、もう100年ほど地道に自然と向き合うことで賑やかな森を取り戻すこともできるかもしれない。知らんけど。