鎌倉と申します。本稿はRuby on Rails Advent Calendar 2023の13日目の記事です。
皆さんはscenic使っていますか?scenicはrailsのデータベースのviewをマイグレーションファイルで管理できるようにするためのgemで、大規模なrailsの開発をやったことがある人なら触れたことがある人も多いんじゃないかと思います。
今関わっているお仕事でもscenicを利用しているのですが、ヘビーに利用しすぎると、ある問題が発生します。
それが「マイグレーションファイルを書くのめんどくさすぎ問題」です (いま名づけました)。
普通にscenicを使っている分には特に困ることはないのですが、viewがviewに依存するような状態が複雑化するとこの問題が発生します。
具体的な例を見てみましょう。例えば、以下のようなviewが存在する状況を考えます。
-
first_results
: 何にも依存していない親のview (バージョンは仮に1とする) -
second_results
:first_results
に依存するmaterialized view (バージョンは仮に3とする) -
third_results
:first_results
とsecond_results
に依存するview (バージョンは仮に2とする)
それぞれのSQLは以下のようになります。
-- first_results
SELECT 'foo' AS bar;
-- second_results
SELECT * FROM first_results;
-- third_results
SELECT * FROM first_results UNION SELECT * FROM second_results;
仮にこのとき first_results
を更新したくなったとしましょう。ここは通常通り bin/rails g scenic:view result_results
を使ってマイグレーションファイルを生成します。
$ bin/rails generate scenic:view:cascade first_results
create db/views/first_results_v02.sql
create db/migrate/20231213000000_update_first_results_to_version_2.rb
このとき生成されるマイグレーションファイル (つまり db/migrate/20231213000000_update_first_results_to_version_2.rb
) の中身は初期状態では以下のような感じです。
class UpdateSearchResultsToVersion2 < ActiveRecord::Migration
def change
update_view :first_results, version: 2, revert_to_version: 1
end
end
このとき、 bin/rails db:migrate
を行うとどうなるでしょうか?残念ながらマイグレーションは失敗します。以下のようなエラーが出るからです。
== 20231213000000 UpdateSearchResultsToVersion2: migrating =============
-- update_view(:first_results, {:version=>2, :revert_to_version=>1})
rake aborted!
StandardError: An error has occurred, this and all later migrations canceled:
PG::DependentObjectsStillExist: ERROR: cannot drop view first_results because other objects depend on it
DETAIL: materialized view second_results depends on view first_results
view third_results depends on materialized view second_results
HINT: Use DROP ... CASCADE to drop the dependent objects too.
「いま更新しようとしてるviewを消そうとしたけど、このviewにmaterialized viewが依存して消せない。しかもそのmaterialized viewにも別のviewが依存しとるよ」と言ってきています。そのため、マイグレーションファイルを以下のように書き直す必要があります。
class UpdateSearchResultsToVersion2 < ActiveRecord::Migration
def change
drop_view :third_results, revert_to_version: 2
drop_view :second_results, revert_to_version: 3, materialized: true
replace_view :first_results, version: 2, revert_to_version: 1
create_view :second_results, version: 3, materialized: true
create_view :third_results, version: 2
end
end
このように「更新しようとしているviewに依存するviewを事前に落として、あとで作り直す」という作業を行わなければなりません。
viewにviewが依存する状況が1段2段程度だったらいいのですが、3段や4段、あるいはもっとたくさんネスト場合を想像してみてください……。依存関係とviewのバージョンを調べて書き出すだけでも結構な負担になってしまいます。
そこで今回リリースしたのが scenic-cascade
というgemになります。
このgemは、マイグレーションファイルの生成を bin/rails g scenic:view
から bin/rails g scenic:view:cascade
に変えるだけで、依存関係が記述済みの(drop_view
/ create_view
が書かれた状態の) マイグレーションファイルを作ってくれます。便利ですよね?ぜひ使ってみて欲しいです!
注意点として、まだリリースしたばかりなので、以下の問題があることをご了承ください。
-
indexの再作成は未サポートです。仮にindexが存在するmaterialized viewに対して
drop_view
が行われた場合にはindexが消えてしまうので、create_view
の後にcreate_index
を手で追記する必要があります - 現状ではpostgresqlのみサポートしています
というわけで自作したgem scenic-cascade
の宣伝でした。初めてのgemへのpushやsteepを使った型検査なども導入できて面白かったです。
余談ですが、scenicには「依存するviewをまとめて落として更新する cascade
オプション」の導入が検討されたことがあり、PRまで作成されていました。
少なくともpostgresqlには DROP VIEW ... CASCADE
というオプションでこれが実現できるので、この cascade
オプションがサポートされれば今回作った scenic-cascade
も不要になるのですが、残念ながらマージされることはありませんでした (コメントによれば、依存関係の解決が正しく行える自信がないみたいな事情のようです)。
14日の記事はalienさんの『数値が三桁区切りで表示される input タグをつくる』です!楽しみに待ちましょう〜